【DVD】アルゴ

【監督】ベン・アフレック
【出演】ベン・アフレック/アラン・アーキン/ブライアン・クランストン/ジョン・グッドマン/ケリー・ビシェ
【公開日】2012年 10月26日
【製作】アメリカ
【ストーリー】
イランで過激派がアメリカ大使館を襲撃、大使館員を人質に取る。彼らはアメリカに逃げた前国王の身柄を要求。混乱の中裏口から6人が脱出し、カナダ大使の家に身を隠すが、見つかれば公開処刑は免れない。そこでCIAの人質奪還のプロ、トニー・メンデスが呼び出される。彼が出した名案は、ウソの映画を企画し、6人をスタッフに仕立て上げて出国させると言う作戦だった・・・。
オスカー候補にもなれば遅くとはいえ順次公開の予定くらいはあるかなと思ったいたのですけども、結局地元では公開の兆しが全く無いままレンタル待ちとなってしまったので、自分にとってはホント待ちに待ったと行った所ですね。ベン・アフレックが監督する作品は毎回評価が高いことでも知られていますが、ウソみたいなホントの人質救出作戦を描いた本作もシリアスとユーモアが込められてて、聞き及んでいた通りに見応えがありました。
まあアメリカが長い事機密扱いにしてたっていうのもあるでしょうし自分が生まれる前の出来事でもあるので、人質事件の事や『ハリウッド作戦』なるものも本作で初めて知ったわけですが、大使館員を映画スタッフに仕立て上げて堂々と帰国させてしまおうと言うその大胆な作戦内容には確かに驚いてしまうものがある。CIAの隠密・極秘作戦の類って暗部のような勝手なイメージが頭の中にもあったので、革命真っ只中のピリピリした国の中でこんなバカっぽい作戦が当時実施されていたのかと思うと『事実は小説よりも奇なり』といった言葉もしっくり来る感じ。・・でも端から見ると正気の沙汰とは思えないものだからこそ奇をてらうかのような狙いもあったんでしょうねぇ。バカっぽいとは言ってもその凝り様は観てて凄まじいものがあり、本場ハリウッドのプロデューサーや特殊メイクマンも協力することでニセ映画用の脚本はおろか製作発表まで大々的に行う周到ぶりで、こういう本格的なとこは正にアメリカならではって感じもしますねwそれにハリウッドスタッフに扮していたジョン・グッドマンやアラン・アーキンらの演技も、ガチガチの社会派に思えた本作にユーモアさを盛り込んでるようにも見え、おかげで地固めに割いていた前半をかなり面白く観る事も出来ました。
・・対してイランに現地入りしてからの後半はユーモア皆無なシリアスムードの連続で、目を離せないような展開も長く続くので観る側も気が気じゃないほどハラハラしてしまいますねぇ。脱出させたという結果は分ってはいても、そこに至る過程が凄い緊張感なもんですから、バザールや空港でのシーンなんてもうやばいことやばいこと^^;。個人的には圧倒的な数とアナログ手法でトニーや職員を追い詰めていくイラン革命軍との攻防や駆け引き、飛行機が飛び立っても領空を出るまでは安心できない気の抜けなさといった細かいとこなんかもスリルがあって良かったですねぇ(ただ『待て』って言った時、え?まだなんか問題が?って思っちゃいましたけどw)。
あと『細かい』と言えば、本作のエンドロール前に6人の職員の顔写真や当時の事件の現場などを写した写真が作品のシーンと一緒に出ていましたが、これもかなりそっくりな描写が多くてこの辺りにも結構驚いてしまった。70年代のイラン情勢の忠実さにもしっかりこだわっていたんだなというのも感じ取る事が出来た気がします。
ベンが手掛けた過去作と比べれば今回は政治色も濃くて、正直なところ自分が苦手とする要素も加わってはいたのですが、それでも飛行機に迫る革命軍のような一分一秒を争う描写といった映画ならではのエンタメ性もしっかりあったので、総じて観ればやはり面白かった作品。それに偽者の企画とはいえ『映画で人助けをする』なんてとこもアカデミー会員の琴線に上手いこと触れそうで、作品賞に選ばれたのもまあ納得かなぁと^^;
・・でも逆にベンは監督賞では候補にすら挙がってないんですよね?それがなんとも不思議でした(汗