この胸いっぱいの愛を(評価:○)

【監督】塩田明彦
【出演】伊藤英明/ミムラ/勝地涼/宮籐官九郎/富岡涼/吉行和子/愛川欽也/倍賞千恵子/中村勘三郎/臼井あさ美
【公開日】2005/10.8
【製作】日本
【ストーリー】
故郷である門司に向かった鈴谷比呂志(伊藤英明)は、かつて自分が住んでいた20年前の門司に突如タイムスリップしている事に気付いた。そこで彼は、難病にかかり手術を拒否してこの世を去った“和美姉ちゃん”に再会する。
和美を救えなかったという思いは、比呂志の胸の中にずっと引っ掛かっていたもの・・20年前の今なら救えるかもしれない。しかし目の前にいる20年前の自分であるヒロ(富岡涼)は、これから和美の身に起こる悲しい出来事を知らなかった。ヒロの気持ちが分かる比呂志は、現在の自分と過去の自分の挟間で葛藤しながら、かつての自分が叶えられなかった願いを果たそうとする・・
【コメント】
タイトルに肖ってじゃないですが、劇場いっぱいに鼻をすする音が聞こえた事聞こえた事♪
自分は友人と観に行ったのですが、友人も隣で鼻をすすってました。そして自分も鼻をすすってました。
・・・・・・・・・や、自分の場合はただ単に前日物凄い体調を崩して風邪を引いてしまい、病み上がりな為に鼻水が出ずっぱりだったので・・・(^_^;)(汗
未来からの黄泉がえり・・・・『黄泉がえり』を観た方なら思わずググッと来てしまうフレーズなのではないでしょうか?
このフレーズも恐らく集客に一役かってますね。
『クロノス・ジョウンターの伝説』と言う原作を、塩田監督が自ら大胆に脚色したと言いますが、観終わった後、もしかして大胆に脚色し過ぎたのではと思うくらい、雑多な部分が目立ちすぎていたような・・・(-_-;)
主人公である鈴谷比呂志と、境遇は異なるが同じく1986年の門司にタイムスリップをしてしまった3人の男女。
比呂志の物語が本作のメインですが、他のタイムスリップした3人のストーリーも『1人』を除いては中々良かった。各々のストーリーもそれ程複雑で深くもない内容ですし、先週観た『シン・シティ』のようにキャスト陣がそれぞれのストーリーでごった返すように出てくるわけでも無いので、簡単に物語を理解出来るのではないでしょうか?
特に盲目の老婦人を演じていた倍賞千恵子のストーリーは凄く短かったものの、序盤で観客のお涙を頂戴するには十分過ぎるくらいにツボを心得ていましたね♪
老人ホーム等では、よく犬を連れて来て触れ合う事で心の癒しを行うアニマルヒーリングというものが注目を浴びているご時世でもあるので、アンバーと再会を果たす倍賞千恵子を観て、自分もちょっと癒された気分にされてしまいました。
ただこの映画、↑でも述べた通り、塩田監督が大胆に原作を脚色し過ぎたのか、所々で雑多な部分がチラホラと見え隠れしているように思えます。
特にメインストーリーでもある比呂志とヒロと和美の物語で、『今も昔も好きだからです』と比呂志が和美に告白する言うシーンがあるのですが、この和美に対する比呂志の『好き』と言う感情がちょっと曖昧だったような気がする。
10歳のヒロからすれば、和美に対する『好き』はLOVEよりもむしろLIKEに近いと思うのですが、冒頭辺りで和美と大人になったヒロ(比呂志)の結婚式のシーンが出たり、クライマックスでは2人のキスシーンで幕を閉じたりと、LOVE面も浮立たせるのです。それとも子供の頃はLIKEと言う感情で、大人になったら異性として感じるLOVEとして解釈しろと言う事なのでしょうか?それとも子供の時から好き=LOVEと言う感情だったのでしょうか?
美少女ゲームならこういう感情は通用しますけど、いずれにしろかなりややこしかった。ちなみに言うなら結婚式のシーンは本当に必要なシーンだったのでしょうか?
それと勝地涼が演じる若いヤクザの布川が、実の母親に会いに行くストーリーは、普通に見る分には感動しますが、色々な仮説が出来ると言う点では酷いストーリーだったと思う。
途中までは布川の父親の事や、母親が保育園をクビになった理由など興味をそそられるストーリー展開でしたが、実の母親と2人きりになる最後のシーンで何だか急に冷めてしまいました。
母親の前で身ごもってる子供はロクなやつにならないとか、挙句の果てに難産で子供を生む変わりにアンタは死んじまうんだと言い、散々ネタバレした後、最後には母親の重み(?)のある一言で納得し、自分の正体を喋った後静かに消えるのです。
その後母親が少し驚いた顔を見せるのは、姿は見えませんでしたが、恐らく思いを遂げた布川が消えていく瞬間を見たのと、目の前で話していたのが自分の産む子供だったと・・色々想像出来るのですが、それとは別の想像で、『難産で死ぬと言う死刑宣告を実の息子に言われて驚いている』・・・と言う想像も簡単に出来たのですけど・・(==;)(滝汗)
↑で1人を除いてと言ってますが、その1人がこの布川です。個人的にはある意味、アフターケアが最悪なストーリーでした。和美のように歴史が変わって難産じゃなかった事を祈るばかりですよぅ・・
塩田監督も何故原作のまま映画化しなかったのかが疑問ですが、これじゃ『黄泉がえり』と比べると月とテナガザルですよ(←このネタ分かる方通です
※蛇足ですが、この映画の舞台の1986年と言えば、ちょうどエニックス(現スクウェアエニックス)の看板ソフトである『ドラゴンクエスト』が発売された日なんですよね。(^▽^;)
『この胸いっぱいの愛を』公式サイト