蝉しぐれ(評価:○)

【監督】黒土三男
【出演】市川染五郎/木村佳乃/緒形拳/原田美枝子/今田耕司/ふかわりょう/石田卓也/佐津川愛美
【公開日】2005/10.1
【制作】日本
【ストーリー】
東北の小藩『海坂藩』。下級武士である養父の元で成長する牧文四郎。父は藩の派閥抗争に巻き込まれ、冤罪によって切腹を命じられてしまう。その後、謀反人の子として苦難の日々を送る文四郎だが、剣の鍛錬で培った強い心、そして幼馴染のふくの友情にも助けられ、懸命に母と生きていった。
時が経ち、ある日、筆頭家老から牧家の名誉回復として文四郎にある任が言い渡される・・・
【コメント】
かな~り前に一度だけ、TV版の蝉しぐれを観た事があったんですが、ふくは劇場版の木村佳乃の方が物腰柔らかな感じがしますね(^▽^;)
藤沢周平氏の原作で映画にもなった『たそがれ清兵衛』と比べると、殺陣以外個人的には蝉しぐれの方が古き良き日本の情景や、日本人の気高い心を強く表しているとは思います。
映画自体、特筆すべき所はあまり見受けられない作品なのですが、四季折々の美しい風景や、時折流れる切なげな音楽が何とも言えない儚げな感じにさせてくれます。
何時の世も国や政治の権力争いや内部抗争は絶えないけど、本作も前半部分はそういった藩内の勢力争いによって父親が反逆の罪に問われ、汚名を背負う事となった少年時代の文四郎の苦難は見ていてかなり切なくなる。でも父親の遺体を荷車で引っ張って坂で立ち往生してる時に、坂の上から駆け付けて来る幼馴染のふくの姿を見たら思わず目頭が熱くなってしまいましたですよ・・・(T^T)
後半はふくが身ごもった子を巡っての、世継ぎを決めるお家騒動を中心にストーリーが進んでいき、文四郎とふくが再会するシーンはちょっと感動♪クライマックスに二人きりになるシーンで、今まで胸の内に秘めていた二人の想いを静かに、それでいてはっきりと口に出す場面は観ていてジ~ンと来ました♪正にプラトニックです。
しかしストーリー全体を観ていて思った事は、ちょっと時間の流れが突飛過ぎるかなと言う感じを否めなかった事です。
後半いきなり大人になった文四郎が出て来たり、文四郎とふくが2人きりで話しているシーンでは文四郎が何時の間にか結婚してて、更に二人も子宝に恵まれていたりと・・
よく『○○年後・・・』と言ったような文が出てくるシーン等があるように、自分としては時間が経つ表現をする上で、この『○○年後・・』とかいう表現は結構気にするほうなんですよね。そうしないとあれから何年経ったのかな・・・と言う事が観る側にもあまり良く伝わらないかなとも思うので。
殺陣のシーンもやや迫力味に欠けますが、でもここで名脇役の田中要次が出演していた事にちょっと喜んでしまった自分。しかも今回は斬られない。それも良かった♪(^w^;)(笑
藤沢周平の原作の中ではかなりの評価を受けている本作ですが、でも映画としてはイマイチ押しが足りないのではないでしょうか?
若年層より、日本文化の良さを理解できそうな年配の方には受けが良い映画かもしれませんね。(自分が観た時はホント年配の方が大半以上を占めてた事も考慮に入れて)
『蝉しぐれ』公式サイト