【監督】細野守
【声の出演】宮崎あおい/大沢たかお/黒木華/西井幸人/菅原文太/他
【公開日】2012年 7月21日
【製作】日本

【ストーリー】
ある日、大学生の花は、人間の姿で暮らす“おおかみおとこ”に恋をした。ほどなくふたりは愛し合い、二つの新しい命を授かった。雪の日に生まれた姉は雪、雨の日に生まれた弟は雨と名付けられた。そしてそんな小さな二人には人間とおおかみの二つの顔を持つ“おおかみこども”として生まれた大きな秘密があった。雪と雨がおおかみこどもである事を隠しながら家族4人は都会の片隅でひっそりと暮らしていたが、その幸せな日々は父であるおおかみおとこの死によって突然に奪われてしまう。取り残された花と雪と雨の3人。幼い二人の子供と幸せに生きるため、花は都会の人の目を離れ、厳しくも豊かな自然に囲まれた田舎に移り住む事を決断する・・・。
【コメント】
奇しくも細野作品にエヴァ新劇という、2009年共に公開され鎬を削った(?)ビッグアニメーションの再現が実現されようとしている2012年。3年前自分はサマーウォーズに軍配を上げて細野作品を推してもいたので当然今回も何かと期待していましたが、これは確かに母賛歌とも言うべき良い作品に仕上げてくれていますね。
何気ない日常の中に僅かなファンタジーを含ませている某アドベンチャーゲームさながらのような細野監督の作風も、誰にでも有り得そうな身近な出来事を描いてる分人それぞれに親近感も沸くと思いますし、ファンタジー要素はその日常に壮大なスケールや感動を与えてもくれているから、それらが本作でも大いに活かされていたように感じました。

本作は子育てに奮闘する母親とその子供達の成長を題材にしていて、世界規模の騒動にまで発展したサマーウォーズに比べればこじんまりとしてるようではあったのですが、子供達は人間とおおかみの血を引き継いで生まれてきた存在なために当然普通の育児とは異なるドラマ性もあったりで、地味に思えた印象も割と早くに払拭。主人公の花が偶然出会ったおおかみおとこに恋をし、2人の子供である雨と雪の成長を見守る13年間が主な内容で、その長大な年月をこの2時間程で大分分かり易く描き切ってると思いますね。・・と言っても出会いや恋の始まりはさわり程度、そして妊娠・出産に到る部分もダイジェスト風な映像でざっくばらんではあるんですけれど、いざ母親となってからの花の気丈さと言いますかメンタルの強さにはまあおそれ入ったものでして、『なり立て』とはいえ母強しという定番な言葉がしっくりくるし、そこは映像を通して凄く理解することが出来た気がする。
至福の時は長く続かず、理由も分からぬまま不慮の死を遂げた夫。またおおかみこどもである雨と雪を育てるのも殆ど手探り状態であるため戸惑いは隠せず、普通の子供じゃないゆえに普通の環境での子育てに限界を痛感し、心身ともに疲労困憊になっていく花の姿はかなり痛々しいんですよねぇ。苦しい状況でも絶やさない笑顔も子供に心配を掛けまいとする振る舞いではあるものの、それが逆に悲しみや不安を内に秘めてどんどん蓄積されているようでもあったので、そのピンと張り詰めた感じがいつプッツリ行ってしまうか、観てる方もなんか気が気じゃなかった。それこそいつか過労で倒れてしまうんじゃないかとか、雨と雪の正体がバレてしまうんじゃ・・というハラハラさも常に付き纏っていた気がしますね。

環境を変えるべく田舎の古民家暮らしとなってからも慣れない土地での暮らしや初体験の農作業に弱音を吐きそうになる花ですが、不器用な優しさを垣間見せる韭崎おじいちゃんらのアドバイスを機に何とか立ち直りを図れるようになるこの辺りからも、個人的にグッと見応えが上がって来て面白くなった♪花にも楽しい時が流れてくるようになり、人目を忍ぶはずだった親子の生活はご近所さん達の助け合い精神に支えられてとても和やかな雰囲気ともなり、途中の不安はどこへやらといった感じにっ^^;雨と雪も成長に伴い、人として生きるかそれともおおかみとして生きるかの瀬戸際に立たされ、子供ながらも自分なりに考え悩み、そしてそれぞれに踏ん切りを付けて自立への道を見出していく過程は、人とおおかみと言う性質を持つゆえか結構ドラマチックにも見えたんですよねぇ。雪のカミングアウトも誰もいない真夜中の学校で負い目がある男の子に全てをさらけ出すというシチュエーションが結構ドキドキモノでしたし、おおかみとして生きる道を選んだ雨と花の別れも感動を誘う。おおかみおとこの彼と同じくあまりにも早い別れ・・、しかし涙ながらに『しっかり生きて!』と雨に向けた花の最後の言葉は、子供が自ら選んで決めた道を母親として受け入れた決意のようでもあり、そこがまたズキューンとかなり胸打たれちゃいましたね。


花の波乱に満ちた13年間は最愛の夫を亡くし、普通の生活もままならないほどの過酷な境遇で辛い事も多かったように見えましたが、それでもおおかみおとことの奇跡みたいな恋も経験すれば、周りの人達に支えられながら色んな事を学び、そしてその中で雨と雪を懸命に育てた1人の母親としては、非常に充実した13年間でもあったのでは?とも思えた物語ですねっ。
・・ただ雨の事もあったせいか、1人の子供が忽然といなくなってしまい田舎町は騒然となった・・・みたいなその後の慌しさも難くなかっただけに、後日談的な最後の映像をめでたしめでたし・・として片付けるにはどうも『う~ん・・( ̄~ ̄;)』と釈然としない気持ちにもなってしまった(それとも秘密を暴露しちゃったとか?)。
雪のナレーションで軽くでも良かったので少し説明を付け足してもらえれば、個人的には嬉しかったかもしれませんね。丁寧に描かれてるとこが多かっただけに、最後の最後で変な想像をしてしまった自分は余計に気になってしまいました^^;(汗
この映画を観ている間,僕は"親"になった。
期待を裏切らないイイ作品だった。
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こんにちは

お父さんの死が余りに唐突で納得しがたいもので、しかも名前を明かさない意味が良く分からなかったりするのだけど、特別な母子の物語として、特に母親が中心に描かれていたところがとても好きでした。
出来れば、花が過労でも風邪でも倒れてしまった時の子供たちのエピも欲しかったなぁ~(花ちゃんが気丈で立派過ぎだから)とかも思ったりするけれど、本当に細田作品はファミリーとホームが素敵に描かれていて心地良いです。

カーテンを利用した雪ちゃんの変身シーン、よかったですねw

たかおでいいのでは?w

>たいむさん♪

そうそう、そいえばおおかみおとこの彼は名前が無かったですよね?自分も非常に気になってました。免許証の氏名欄もちょうどイイ感じでボヤけてましたし伏せる理由が不透明ではありましたけども、もしかしたらたいむさんの言うように花と雨と雪、この3人の親子を強調して描きたかったという意味合いが込められたものなのかもしれませんね。・・でも名無しの権兵衛さんじゃかわいそうなので分かり易く『たかお』と命名しましょう(爆

母子の物語をとても丁寧に描いてると思いましたし、監督オリジナルのサマーウォーズに続いて温か味のある内容でしたね。それに前作もそうでしたが『あるある』的なシーンも多くて、今回はお隣さん同士の物々交換が個人的にツボ♪自分も以前ババ様の知人からきゅうりと茄子を交換しましたw

あ、そういえばエヴァも同じキャラデザでしたね。ガンダムの富野監督はエヴァを酷評してましたけど、こちらは「アニメの歴史を変えた」と大絶賛だったそうです。丸くなったんかなw

花さんは残されてかわいそうですけど、まだ若いんだし新たらしい人を見つけて第二の人生を歩んでほしいです。あの面倒みてくれたじいちゃんとか・・・

コミックなどに期待

>SGAさん♪

富野監督そんなこと言ってたんですね^^;あの人のお眼鏡に適えば確かになんか『箔がつく』感じもしますけど、個人的にアニメの歴史を変えた・・・かなぁ~?と首傾げなのは自分だけ?!

花が最後に雪ちゃんと写ってる時の映像は多分三十路くらいですから、充分美人ですよね。映像では無理でしょうけど、コミカライズでの第2章の可能性はあるかもしれませんね?

こんにちは!

メビウスさん、こんちは!!
コメント&TB有難うございました。
前作『サマーウォーズ』は個人的には大好きで、話にも感動しちゃってたので、今作もかなり期待を高めて観ていたのですが、最後の別れだけがどうにも納得がいなかったです^^;
親としては子が自立してくれるのは凄く嬉しい事だろうとは思いますが、何も相談されないまま出て行かれても尚「頑張って」と応援するのは自分的にはかなり引っ掛かります。
もし自分が花の立場だったら「一言位相談してくれても・・・」と夜も眠れない状態になるかもですよ。
ほんと、そこだけが何かモヤモヤしたというかしっくりこないものがありました。
それでも花の懸命に子を育てながら田舎で生き抜いていこうという姿には勇気を貰いました。
あ、それと私も急に雨が居なくなった事で、村人たちからは怪しまれなかったんだろうかってのは見ていて思いましたねぇ。

普通の子じゃないゆえか・・

>ヒロ之さん♪

唐突な別れでもありましたから、現実的な点で考えたら雨の行動はちょっと親不孝にも見えちゃいますね^^;ただ雨はおおかみこどもでもありますから、花もやっぱりどこかで割り切っていた・・ああいう別れが来るのも想定していた上であの言葉をかけたのかも?ただ花としてはもう少しだけ傍にいて欲しかったという思いもあったかもしれませんね。

村人達へのフォローは一体どうしたのやら・・?今でも凄い気になりますw

こんにちは

雪の心情はナレーションが雪のためよく伝わってくるものの、雨の心情は伝わり難いため、唐突に自立してしまう印象がありますが、それまであの花のパート先の自然館で活き活きとした雨のシーンや先生についていくシーンなどがあるので、予め花もいつかこういう日が来ると覚悟していたのでしょうね
それでも、やはりまだ早い、側にいてほしいって思いはあるでしょう。しかし自分で決めた道をいくこどもに「しっかり生きて!」とはその言葉に凝縮された思いが深いものであることがしっかりと鑑賞者に伝わるあたり、地味ではあるけれどこの作品はやはり良作だったと感じます
雪と草平くんのその後の行方も気になります!

その後は・・・

>makiさん♪

雨と雪が成長してからはどっちかと言うと人間でいる事を望む雪の視点の方が多い気もしますので、雨の心情が少し弱いのも分りますね。実際あの先生と呼んでいた動物と何を学んでいたのかも些か不透明でもありましたし・・。
けど子供の自立って親からすれば離れてしまう寂しさもあれば、成長を実感する喜びもあるでしょうから、花が雨に向けた最後の言葉もその2つの感情が入り混じっていたような気がしました。・・まあ10代で自立っていうのも早過ぎるような感じがしますけど、『おおかみ』として見ればやはり一人前なんでしょうねぇ。
雨もそうですが、雪もその後は草平と仲良く学校生活を送れてるのか確かに気になりますねっ。こういうアナザー的な物語はサマーウォーズみたいにコミカライズして欲しいですね♪

おじゃまします

おじゃまします。
作り手の狙い通りなんでしょうが、暗い描写が多く、仰るように落ち着かない気持ちになる映画でした。
身構えて観ないといけない映画ですね。全体的には良い映画だったと思います。
では、また来させていただきます。今後とも宜しくお願いいたします。

ハラハラ

>ピロEKさん♪

確かに最初はちょっと暗い気持ちにもなる描写が多くて不安な気持ちになっちゃうんですよねこの作品^^;大黒柱のおおかみ夫の突然の死に加え、未亡人が慣れない子育て・・しかも普通の子育てじゃないのもあって、今でもあの場面を見るとハラハラした気持ちになると思います。

今年細野監督の新作が公開されますから、近くなれば多分また本作が放映されるでしょうね~。あーハラハラw

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