河童のクゥと夏休み(評価:☆)

【監督】原恵一
【声の出演】田中直樹/西田尚美/なぎら健壱/ゴリ/冨沢風斗/横川貴大/他
【公開日】2007/7.28
【製作】日本
【ストーリー】
夏休み前のある日、康一は学校の帰りに拾った大きな石を家に持って帰り、それを水で洗うと中から河童の子どもが現れた。 第一声から「クゥ」と名づけられたその河童は人間と同じ言葉を話し、初めは驚いた康一の家族もクゥのことを受け入れ、クゥと康一も仲良しになり一緒に暮らす事となった。やがてクゥは仲間と会いたいと言い出し、康一はクゥを連れて河童伝説の残る遠野へと旅に出る・・・
【コメント】
原恵一監督の手掛けたクレヨンしんちゃんの映画が、大人にも受けたのが分かる気がします。子供が楽しめるストーリーの裏に見え隠れしている深いテーマは、人間の愚かさ等が切実に映し出されていて、考えさせられる部分も多々ありました。
しかしこのアニメ、冒頭からかなりショッキングなシーン


そんな衝撃的な場面から何百年も経った後、河童のクゥが主人公の康一に発掘(笑)されるのですが、そのクゥを家で飼う事に難色を示すママと妹に対し、何とかクゥを家で飼う事に説得するパパと康一のやりとりが、実際にペットとかを飼う時に家庭でありそうなリアルな1コマに見えて面白かったです♪クゥを目の前で見せられて『ヤダヤダヤダ!!』って言いながら逃げ回る康一ママが、クモを見て同様の言葉を連呼する自分のオカンにそっくりなのもちょっと笑えたし、妹の瞳がクゥに嫉妬する姿もこれまた露骨に険悪で失笑してしまいますw
しかしそういう家族のほのぼのとした風景とは別に、イジメや環境破壊と言った、現実でも問題になっている事を随所に取り入れている。
康一は河童を飼っていることが後になって公になり、更に学校でイジめられていた菊池という女の子と親しげに話していたのもあって、仲の良かった友達から敬遠され自身もイジメられる側となってしまう。イジめられている人を庇ったり親しくなったりすると、今度はその人までイジめられる対象になるっていうのは現代のイジメ問題の典型的なパターンの1つでもあるし、この描き方は良くも悪くも忠実だと思いますが、アニメでもそういう場面を観せられるとやはりあまり気分はよくありませんね。
またマスコミの煽りや珍しいものを見た時の人間の熱しやすい行動も、端から見るとその人の気持ちを考えない迷惑な行いでとても醜く見えてしまいます。恐らく自分もああいう人がわらわらいて騒いでる場所に居合わせたら同様の行動を取っているかと思うと、反省させられる気持ちにもなってしまう。
それに『クゥちゃんだっクゥちゃん!』って言いながら携帯片手に追い掛け回すシーンなどを観て、『ちゃん』繋がりで自分は荒川のタマちゃんもちょっと思い出してしまいました。今どうなってるか分かりませんけど、あの時も皆『タマちゃ~ん』とか言って騒いだりカメラ撮ったりなんだりしてるのをテレビ越しで見てましたが、タマちゃん視点だと『放っておいてちょうだい』みたいな感じも抱いていたかもしれませんね(^^;)
今年の夏は色んなアニメ映画がわんさか公開されていますけど、この『河童のクゥと夏休み』はその中でもダントツに素晴らしいアニメだと思います。
クゥとの友情や冒険、家族愛に淡い初恋と楽しめる要素もいっぱいあったんですけど、ただ1つだけ不満があるとすれば・・それは犬のオッサンの死に対する上原家の想いというのがいささか希薄に感じられた事ですね。涙を流したのがクゥとママだけって一体・・・


事故死したのなら尚更悲しくなると思うんですけどね。
『河童のクゥと夏休み』公式サイト
