TENET テネット

【監督】クリストファー・ノーラン
【出演】ジョン・デビッド・ワシントン/ロバート・パティンソン/エリザベス・デビッキ/ケネス・ブラナー/マイケル・ケイン
【公開日】2020年9月18日
【製作】アメリカ
【ストーリー】
ウクライナでテロ事件が勃発。出動した特殊部隊員の男は捕らえられて毒を飲まされる。しかし毒はなぜか鎮静剤にすり替えられていた。その後、未来から「時間の逆行」と呼ばれる装置でやって来た敵と戦うミッションと、未来を変えるという謎のキーワード「TENET(テネット)」を与えられた彼は、第3次世界大戦開戦の阻止に立ち上がる・・・。
さすがは驚愕する映像表現をどこまでも追求しているクリストファー・ノーラン監督ですね。本作もとても興奮するスパイ映画として楽しめた・・・と同時に、時間移動が忙しなく起こるSF要素も併せ持つとても難解な作品だなとも思った次第。
逆行する時間の中で過去と未来を巡りながら冷酷非道な武器商人の野望を阻止するといった内容も、まあ聞く分ですととても壮大であり興味もそそられますし、実際巻き戻っていくような銃弾や人、物を掻い潜りながらのアクション諸々は『インセプション』や『インターステラー』より更に不可思議さが増しているのが伺えて、観てて本当に独創的で革新的なものも感じてしまいますね。ノーラン監督は確かデジタルな手法をあまり使わない人だとも聞いてはいますから、ああいった逆再生みたいな場面をアナログでやっているのだとしたら、一体どうやってるんだろう?というのもまたその不可思議さに拍車をかけていたように思えます。
・・ただ本作における時間の逆光のメカニズムなんですが、自分の想像していた以上に複雑でして、劇中でも正規の時間軸と逆行した時間軸の度重なる往来に加え、その二つの時間軸も時には同時展開となったりしてましたし、そして未来での干渉が過去の色んなシーンにも伏線のように散りばめられてもいたので、逆行映像を楽しんでいた反面、その入り組んだストーリー性にも終始振り払われないよう必死になって食らいついてもいたというのも正直な所なので、心底楽しめたかなぁ・・・と言えばやっぱりちょっと違うかもしれませんね?^^;(汗)。『プレステージ』や『インセプション』の時も自分はそうだったのですが、一度の鑑賞ではとても理解出来たり納得出来なかったので本作も全体を把握する意味ではやはりリピートは必須のようにも思え、自分も後日に再鑑賞することで随所で背景のように何気な~く通り過ぎていってるシーンにも注視することができ、結果面白味も増したのを実感することが出来た気がしますね。
まあ個人的には単純明快な作品の方が大好物なので、ノーラン作品にしてもバットマンシリーズなどがやっぱり至高でもあったりはするんですが、ただそれでも『過去の先にあるのは未来』だとかそういう言葉で言うのもひどく当たり前に思える世間一般な常識なんかを、独自の解釈と視点でもって常識枠内を飛び越え全く異なる見方を促すような作品なんかも好きではあるので(直近では『メッセージ』とか)、このテネットも一見・・いや二見三見と回を重ねるたびに価値を増してくる作品なのかもしれませんね。