ジョーカー



【監督】トッド・フィリップス
【出演】ホアキン・フェニックス/ロバート・デ・ニーロ/ザジー・ビーツ/フランセス・コンロイ/ブレット・カレン
【公開日】2019年10月4日
【製作】アメリカ

【ストーリー】
「どんな時も笑顔で人々を楽しませなさい」という母の言葉を胸にコメディアンを夢見る、孤独だが心優しいアーサー。都会の片隅でピエロメイクの大道芸人をしながら母を助け、同じアパートに住むソフィーに秘かな好意を抱いている。笑いのある人生は素晴らしいと信じ、どん底から抜け出そうともがくアーサーは何故悪のカリスマ・ジョーカーに変貌したのか?切なくも衝撃の真実が明かされる・・・。
 
【感想】
自分も一応性善説を信じているからか、『悪』というレッテルを貼られた人物ってやはり生まれながらではなくそれなりの動機が過去にあるからこそだと思いますし、それは狂気の犯罪者なるイメージがすっかり定着してしまったジョーカーも然りなので、そういう悪の足跡というか起源というものを知る意味でも、本作の主人公である無名の大道芸人・アーサーがカリスマ的存在のジョーカーになっていく過程の物語は、確かに前評判などで知り得た絶賛ぶりも理解出来る非常にパワーのある内容だったと思う次第。

舞台にもなっているゴッサム・シティの治安の悪さみたいなものにしても過去の映像作品やゲーム作品などを通して自分もある程度理解してはいましたが、本作のゴッサムの設定にはなんでも7~80年代のNYの世界観も取り入れているとの事なので、架空の都市でも随分とリアリティのある雰囲気に見えてしまうのはそのせいなのかもしれませんし、故に心優しいアーサーが数々のネガティブの波にのまれて変貌していく要素にもとても説得力が生まれていて、それがやっぱり見応えのあるものにも直結していったんじゃないかとも思う。・・ゴッサムでの理由なき日々の暴力や、貧困層の弱き者にはまるで手を差し伸べない政治や社会のシステム、そしてそこに追い打ちをかけるかのようにアーサー自身の隠された過去が明らかになった時、偽りの笑顔で内に抑えていた衝動が爆発してしまう瞬間には観てる側にも何かただならぬものが生まれたかのような戦慄を感じさせると同時に危うい魅力も放っていて惹きつけられもしてしまいますね。・・・まあ勿論ジョーカーとなってしまった彼の行為自体に関しては到底肯定出来るものではないものの、ただそこに至るまでの理由が悲哀に満ち満ちているだけに同情の念もまた生まれてしまうものだから、鑑賞後はすごい複雑な気持ちにさせられてしまったのでした(汗


DC関連作品も今年公開されたアクアマンにシャザムと、個人的には良作な単独作品が続いていましたけど、それに続く形で本作のジョーカーもアクションこそ皆無なれど、その分人間ドラマに比重を置いているスピンオフ作品として観ると完成度がすこぶる高く、またバットマンとも繋がりを持たせるシーンもきちんと取り入れる辺りもおそらくファン層は喜んでくれるでしょうから、本作をシリーズの正史として刻んでも然程おかしくないのではないでしょうか?
あとはやはり主演のホアキン・フェニックスで、本作のアーサー=ジョーカー役はもう素晴らしいの一言に尽きますね。痩せこけた体や突発的に発せられる笑い声、積み重なった怒りや悲しみなどもちゃんと伝わってくる、そういった彼の全身全霊の熱演は釘付けになること請け合いですし、アカデミー賞の声が上がっているのも納得です。狂気が滲み出ている純粋悪という点だと自分はヒース・レジャーが演じていたジョーカーが一番だったのですが、ホアキンジョーカーの台頭によってその一番がかなり揺らいでいる今日この頃。ホアキンも是非オスカーを獲得してもらいたいものですね。

14 Comments

吉兼章仁  

初訪問です。

2019/10/15 (Tue) 20:26 | EDIT | REPLY |   
隆  

奇しくも道化の姿をしたジョーカーが、ゴッサムシティであれだけ受けたのは、貧困と犯罪という厳しい生活環境において、道化のように、少なからずの人々が生きる目標を見失っていたからでは無いでしょうか。

つまり、にわかジョーカーというのは、見映えだけで、熱狂的な支持者というのが多数居る事が、アーサーの慰めになるとは限らない木偶なのかも知れません。

ホアキンで良かったと思います。是非、勝ってもらいたいです。

2019/10/15 (Tue) 22:17 | EDIT | REPLY |   
たいむ  

切ないよね。これ。

ご無沙汰してしまいましたが、お元気ですか(´▽`)

ジョーカー誕生の物語でしたが、微妙なバランスでギリギリに保たれていたものが砕け散る音が聞こえたような、人間が壊れる瞬間を見せつけられた気がしました。
あの理不尽な世界と彼の背景を考えると、アーサーが”ジョーカー”に変異してしまうのは必然のように感じられます。それに関してはただただ不憫としか言えず、そういう点では、誰も救われない、切ない映画だったな~って。

ただ、悪魔になったジョーカーと、それに乗っかって最悪なカタチで蜂起した市民の極悪非道の行いは別物で、別の視点から考えなくちゃなんだろうなって。
とはいえ、もはや収拾がつかない感じがする香港の例からも、リーダー不在の混乱や犯罪の難しさ(「踊る大捜査線」は先見の明があるよね)を感じるこの頃でもあり、より複雑化した現代を憂いちゃうところであります。

とまぁ、鬱々な見応えだったのだけど、ラストのバットマンに繋がるシーンは「ここに繋がるのね」って嬉しく(語弊はある)なったりしてw
ノーラン作品じゃないしなぁ思っていたのだけど、パスしないでちゃんと劇場で観て良かったです。

秋も深まり冬の音も聞こえてきそうな季節になりましたね。どうがご自愛くださいませ。
ちなみに、こちらは幸いにも台風15号も19号も大きな被害はありませんでしたので。一応ご報告まで。(アレコレ長くなってごめん)

2019/10/16 (Wed) 20:40 | EDIT | REPLY |   
メビウス
メビウス  

こんなにも同情するとは

>吉兼章仁さん♪
ご訪問頂き有難うございます^^凄くマイペースな更新ではありますが、お時間がある時にでもまた寄って頂ければ幸いです。


>隆さん♪

アーサーがカリスマのような存在になれたのは最初偶然による所も大きいものの、それでもトーマスのピエロ発言等が着火剤ともなり、それがアーサーの積み重なった怒りとも連動するかのように取り返しのつかないとこまで膨張していく過程は、現実のメディアなどでも度々目にする過激なデモ運動に似て通じる部分もあってとても恐ろしいリアリティさがあったかと思いますね。


>たいむさん♪

ご無沙汰しております^^たいむさんもお元気そうで、そして映画鑑賞も変わらずなようで何よりです♪

ジョーカーは過去の作品のイメージもある分、それこそ感情移入なんてまったくなかったのですが、トッド・フィリップス版は格差社会での弱者の立場を下敷きにもしてるせいか、とてもリアリティのあるジョーカーを描いてくれたと思いますね。まさか自分もジョーカーに対して同情めいた気持ちになるとは思いませんでした^^;・・でもとても見応えもあったので、確かにレンタル待ちにせず大スクリーンで圧倒されるべき作品でもありますね。

※あとそういえば先週台風19号が首都圏にも迫っていて各地で色々な被害が出ましたね。自分もたいむさんも幸い被害もなかったようですが、近年は温暖化の影響もあり気候も随分様変わりしています。自分の所は大丈夫だからと言う構えではなく、常に備えを意識した行動は持ちたいですね。

2019/10/17 (Thu) 21:01 | EDIT | REPLY |   
ボー  

敬意

コメディをつくってきた監督というのに驚いたのですが、この方、敬意を欠いた映画をつくったような発言があったらしく、そうならば、おお、なるほどね、と思えますね。

2019/10/17 (Thu) 23:38 | EDIT | REPLY |   
メビウス
メビウス  

コメディ監督の印象

>ボーさん♪

トッド監督の作品だと自分はハングオーバー!シリーズしか鑑賞していませんが、でも確かに自分もそういうコメディ畑の印象しか持ってなかったので、本作の衝撃たるは凄かったです。
・・・でも敬意を欠いてるという意味でだと、そのハングオーバーも確かにそうですね(笑

2019/10/18 (Fri) 21:36 | EDIT | REPLY |   
風情☭  

こんにちは♪

ゴッサムシティの雰囲気は過去作のようなコミックス感を消して現実感を前面に押し出したことで、「 バットマン 」
関連作品でありながら、それを感じさせないひとつの作品とした趣がありましたね。
まぁ、感情移入しがちだからどうしても性善説となってしまいますが、個人としては常に余裕を感じさせ、常に人を
喰った感のあるジョーカーが好きだし、オチの 「 スゴい、ジョーク 」 の行からしても性悪説でいきたところです♪
(゚▽゚)v

2019/10/19 (Sat) 10:45 | EDIT | REPLY |   
ノルウェーまだ~む  

リアリティ

メビウスさん☆
ホアキンの全身全霊の演技で圧倒されまくりました!
私も今まではヒースレジャーが一番と私も思っていましたが、超えた?と言っても良いのかも…
CGとか使わないゴッサムシティや追い詰められていく様子がじっくりと描かれていて、実にリアリティがありましたよね。
そして同じく鑑賞後とても複雑な気持ちになって思わず泣いてしまいました。

2019/10/20 (Sun) 00:20 | EDIT | REPLY |   
メビウス
メビウス  

実は性悪説

>風情♪さん♪

前半~中盤辺りまではアーサーの優しさも前面に出ていたので善良なイメージが先行していましたけど、後半で母親譲りの妄想癖も露わになっていましたので、それを鑑みると風情さんの推測もあながち間違いではない可能性も出てきましたね^^;やはりジョーカーは人をかき乱す存在なのでしょうかね?


>まだ~むさん♪

ヒース・レジャーもジョーカーの役作りのためにかなり肉体を酷使していたと聞いていますが、本作のホアキンジョーカーもあの痩せこけた体などを見ればどれだけ力を入れてたかも分かりますよね。・・けど当の本人は役作りで痩せるのが辛くて本音は痩せたくなかったんだそうです(汗

ゴッサムがリアルシティにも見えた分、社会性もはらんだ内容はキツイ場面も多かったですが同時に圧倒もされました。観終ったあとはバットマン一作目を再鑑賞すると一層味わい深くなるかもしれませんね?

2019/10/20 (Sun) 21:08 | EDIT | REPLY |   
ノラネコ  

この映画のゴッサムシティにはなんと「ウォール街」があるので、もう隠すつもりもなく81年のニューヨークですね。
ニューヨークの治安が最悪だった時代で、今と違ってブロンクスとかマジでヤバかった頃です。
他のDC作品とは一線を画す世界観のリアリティもこの作品に深みを与えている一因かもしれないですね。
まあ全部ジョーカーの妄想かもしれませんけどw

2019/10/24 (Thu) 22:45 | EDIT | REPLY |   
メビウス
メビウス  

リアルな時代背景

>ノラネコさん♪

自分も劇中で『あれ?』と違和感感じた部分があったのですが、やはりウォール街だったようですね。自分が生まれた頃とほぼ同じ年代なので、当時の状況こそ分かりませんが、それでもそうした時代背景も取り入れているからこそ、ゴッサムもジョーカーもあまり絵空事のように思えない部分があったんだと思えます。

・・でもあれだけの治安の悪さですから、妄想でもあって欲しいとこはありますね^^;

2019/10/25 (Fri) 20:32 | EDIT | REPLY |   
隆  

ジョーカーは、道化のようなそのルックスはさして恐くは無いのですが、しゃべると毒素をまき散らす人で、まさに売れない毒舌コメディアンという根っ子というのは、ピッタリだと思いました。

妄想の具現化、ゴッサムシティぐらいのサイズの都市内で、彼の犯罪芸術は完結するのだと思います。悪友たちは居れど、そこから外の世界や他の都市への進出は、バットマンが居る限り無いものなのでしょうね。

まさに、ヒーローとヒールというのは、合わせ鏡であり、常にヒーローばかりが強い方だとは限りませんが、拮抗した因縁の関係にあるように思いました。

2019/10/27 (Sun) 20:11 | EDIT | REPLY |   
maki  

こんばんは。

コメントありがとうございます。

格差社会の中で、貧困にあえぐ人々が、
アーサーの行動から暴走していく様は、現実世界でも
起こりえるようで、そういう意味では恐ろしい物語でしたね
ただ、アーサーだけをみると、やはりあの7錠飲んでいた抗精神薬をとめられたこと。
これってかなり危険なのでは…と似た薬を飲んでる私はちょろっと思いましたよ
彼が妄想をみ、真実の様に語るのは、断薬の副作用なのでは…とかね。
ラストのセリフが、なんとも鑑賞者を惑わしますよね

2019/10/29 (Tue) 22:37 | EDIT | REPLY |   
メビウス
メビウス  

>隆さん♪

ホアキンジョーカーはコメディアン志望でもあるからか、自虐の中に社会に対する憤りも上手く滲ませていて、聞いてる方としては少し苦笑まじりになってしまいますよね^^;
後のバットマン=ブルースともああいった過去をはらんでいたと言う背景があれば、長きにわたる両者の因縁の関係にも説得力が生まれて良かった気がします。あの辺りは出来れば妄想で片付けて欲しくない過去ですね。


>makiさん♪

誰かや何かを象徴またはアイコンにして事象が大きくなっていくことは現実の歴史などを見ても明らかですから、アメリカでもこの作品の公開時は警戒の対象にしてると言うのも頷けるものがありました。正直参考にしそうな暴徒がいそうなくらい危ない側面もあった内容ですもんね(汗

アーサーの虚偽云々については最後まで明確にはなっていませんでしたけど、薬も含めてそこかしこに伏線を張っていたので、それで自分たちもあーじゃなかろーかこーじゃなかろーかとまた妄想を膨らませているのもどこか可笑しい感じもしますねw

2019/11/05 (Tue) 20:05 | EDIT | REPLY |   

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