ダンケルク

【監督】クリストファー・ノーラン
【出演】フィオン・ホワイトヘッド/ハリー・スタイルズ/ケネス・ブラナー/キリアン・マーフィ/マーク・ライランス/トム・ハーディ/他
【公開日】2017年9月9日
【製作】英、オランダ、仏、米
【ストーリー】
フランス北端ダンケルクに追い詰められた英仏連合軍40万人の兵士。背後は海。陸・空からは敵。そんな逃げ場なしの状況でも、生き抜くことを諦めないトミーとその仲間ら若き兵士たち。一方母国イギリスでは海を隔てた対岸の仲間を助けようと、民間船までもが動員された救出作戦が動き出そうとしていた。民間の船長は息子らと共に危険を顧みずダンケルクへと向かう。英空軍のパイロット・ファリアも数において形勢不利ながら出撃。こうして命をかけた史上最大の救出作戦が始まった。果たしてトミーと仲間たちは生き抜けるのか。勇気ある人々の作戦の行方は・・・。
戦争を題材にした作品はストーリーとか壮大さとは別に鑑賞すると高い確率で気持ちが沈んでしまう事があるので、それがこの手のジャンルを敬遠する理由の一つでもあるわけでして、本作にしてもやっぱりクリストファー・ノーラン監督が手掛けてるというの部分が、自分を劇場に足を運ばせた正直な気持ちでもあったりしますね(汗)・・そんな本作は1940年にドイツ軍の包囲によって孤立した英仏の連合軍兵士達の救出作戦を描いたものですが、なかなかに凄い臨場感のようなものを味わえた作品だった。
戦争映画ってその悲惨さを後世に伝える意味でもかなり残虐な描写があったり登場人物らの重厚なドラマなんかがキモであったり・・・な感じを個人的には思っているんですけども、ノーラン監督はそうした自分のイメージとは少し異なる描写や演出で戦場をリアルに描いていた気がしたんですよねぇ。ダンケルクの戦いは敵対するドイツ軍からの撤退戦だという事を鑑賞前に知リ得てはいましたけど、本作ではそのドイツ軍の猛攻からいかにして40万人近い兵士たちを救出したのかと言う部分のみに焦点を当て、そしてその様子を陸上での一週間、海での一日、そして空の一時間と言う3パートにも区切る事でそれぞれの局面で当時の非常に切迫していた救出劇を観てる自分たちにもどこか追体験させているような感覚になりまして、この体験するような感覚が正に本作の見所の一つだったんじゃないかなと思う。
そんな没入感のようなものを追求したノーラン監督の演出は観てると要所で多々感じる事ができまして、時折聞こえてくる時計の針が時間を刻むようなサウンドもおそらくその一つでしょうねぇ。撤退戦というのは迅速さが求められるでしょうから、一分一秒を争うような状況があのチチチチ....という静かな音によってどこか焦燥感を掻き立てられるものにもなっていて、ホント時間に追われるという言葉を上手く表現したかのような、とても秀逸なサウンドでの演出だったように思えた。モチロン秀逸なのはサウンドだけではなく映像などにも盛り込まれており、全編通して登場人物のセリフなどが極端に少なく見えたりしたのも特徴的。撤退するだけのある意味シンプルな内容ですからそう語るべき必要もない・・・てな事は無いとは思いますが(汗)、それでも冒頭の街の中の銃撃や、ぎゅうぎゅう詰めな防波堤を上空から狙い撃ちする戦闘機など、純粋に映像だけでシーン毎の恐怖を伝えるパワーもあったので、セリフが少なくとも十分に理解できたのはノーラン監督の手腕が成せる技とも言うべきなのでしょうかねぇ?そうそう字幕も必然的に少なくなるので、尚更映像に見入るようになってた気がしないでもなく(笑
・・ただ個人的に一つ観てて難があるとしたら、陸海空のパートが同時進行してたので少し時間軸が曖昧で困惑するとこもあったりでしたね。時間帯だけは字幕で表記してくれれば有難かったかもしれません^^;
ともあれ苦手意識が抜けない戦争映画を体験型のような圧巻の映像とサウンドで魅せてくれたおかげか、100分弱の時間良い意味で釘付けにはなりましたし、結果お気に入りのノーラン監督の作品がまた一つ増えた感じにもなりまして、鑑賞して良かったと思えた次第。地元に環境が整っていませんが、こういう作品こそ高品質なIMAX上映などで鑑賞すべきかもしれませんねぇ?
・・まあこんな映像映像とばかり言っちゃってはいますけども、陸海空パートでそれぞれに展開していた個々の登場人物の救出劇や逃亡劇もドラマチックでして、とりわけトム・ハーディが演じていた空軍パイロット・ファリアの活躍が素晴らしかった♪限られた時間と燃料の中ギリギリまで友軍の援護に力を尽くした勇姿には、最後の結末も含めて個人的に胸を打たれてしまいましたね。