メッセージ

【監督】ドゥニ・ヴィルヌーヴ
【出演】エイミー・アダムス/ジェレミー・レナー/フォレスト・ウィテカー/マイケル・スタールバーグ
【公開日】2017年5月19日
【製作】アメリカ
【ストーリー】
突如地上に降り立った巨大な球体型宇宙船。謎の知的生命体と意志の疎通をはかるために軍に雇われた言語学者のルイーズは、“彼ら”が人類に何を伝えようとしているのかを探っていく。その謎を知ったルイーズを待ち受ける、美しくそして残酷な切なさを秘めた人類へのラストメッセージとは・・・。
原作の短編小説の方は知りませんでしたので、興味を持ったのは勿論変な形をした巨大な宇宙船のインパクトであったり、アカデミー賞でも注目されてたりといった部分で、まあ言うなれば外面判断の鑑賞でもあったわけなのですが(汗)、それでもこれは結構面白く観れましたね。自分の好みや思っていたのとは少し異なっていたSF要素(?)でもありましけど、その斬新な設定に見入ってもいたため、終始興味深い内容でもあったかなと思う。
自分が思っているSF要素というのは当然ドンパチありきモノでして(笑)、未知の生命体が宇宙船が地球を侵略するといった『インデペンデンス・デイ』よろしくな展開が好みでもあるもんですから、正直本作にもそういうものを期待して無かったと言えば嘘になりますね^^;・・・まあ実際そういったシーンは本作には残念ながら一切も出て来なくて、謎の宇宙船で来た地球外生命体・ヘプタポッドと人類とのコンタクトを淡々と描いているようなものだったのですが、ただやはりその未知との遭遇をかなり濃密にも描いてるせいか、張りつめた緊張感のような雰囲気も観てる中でちゃんと感じる事は出来たんですよねぇ。突然に飛来してきた宇宙船に対する各国の対応や、未知の存在に対する周囲の人達の不安や拒否反応、そしてそれが蓄積されていった結果生じる混乱や暴動などといった一連の流れなんかもリアルに見えましたし、現実でももしこういう風に来たら大分似た感じのシチュエーションになるんじゃないかとも思ってしまったので、この辺りはちょっと『シン・ゴジラ』でも見受けられたシミュレーション感覚の映像のようにも観てましたねw
あと本作の根幹でもある何故彼らは地球に来たのかという謎の部分も物語の進行とともに徐々に紐解かれていきますが、そこに行き着くまでの映像の見せ方も個人的にはとても良かったですね。本作にはヘプタポッドと懸命にコンタクトを取る現在のパートと、主人公のルイーズが愛娘との思い出を回想する過去のようなパートが交互に描かれていたのですが、現在のとあるシーンで知った言葉を過去で思い出したかのように語るという違和感めいた場面が度々見られると、その過去と現在と思い込んでいたのが実は全くの真逆だった事にも驚かされてしまったりだった。
『言語が思考を形成する』・・だったでしょうか、確かそういうフレーズも本作の中に出ていたのですが、それも頭の片隅に置きながら観ていると、ルイーズがヘプタポッドと彼らの言語に身近に接してた故に起きた自身の変化や、そのヘプタポッドが地球に来た理由、そして幾度となく思い起こす愛娘との風景、といった様々な謎も理解出来てくるので、多分初見でも頭を傾げずに面白く観る事が出来るんじゃないでしょうかねぇ?本作を観るまで言語と言うものに関して自分もそれほど深く考えた事が多分無かったものですから、その性質とも上手く絡めた真相も秀逸でしたし。あの映像の仕組みも知った上でもう一度本作をリピートすれば、ルイーズと同じように世界の見方が変わって違う楽しみを得られるかもしれませんね^^
・・ただ自分たちが当たり前のように感じている時間の流れのようなものから最終的に超越してしまったルイーズですが、なんか凄い能力を授かったような反面、どこか哀しい運命も背負ってしまったようにも見えてしまいましたねぇ。将来の結果諸々を認識出来てしまうというのは、要するにそこに行き着くまでの過程・・期待や希望を持つ事が空しくなってくる事にもなりかねないでしょうから、未来に向けてのモチベーションの減衰は常人よりも計り知れないものがあるように思えてならない--;
そう考えてもしまうと、ヘプタポッドの贈り物というのは果たして地球人類にとって最良のものなのかなぁ?と、終わった後妙なネガティブ思考も抱いていた自分。少なくとも自分だったら要らないやあんな能力^^;まあ3000年後にその能力をどう活かすのかは気にになるとこではありますけどね。