バーニング・オーシャン

【監督】ピーター・バーグ
【出演】マーク・ウォールバーグ/カート・ラッセル/ジョン・マルコビッチ/ジーナ・ロドリゲス/ディラン・オブライエン/ケイト・ハドソン
【公開日】2017年4月21日
【製作】アメリカ
【ストーリー】
トランスオーシャン社の電気技師マイクが愛する妻子とのしばしの別れを惜しみ、メキシコ湾沖の石油掘削施設ディープウォーター・ホライゾンに赴いた。ところが、雇い主である大手石油会社の管理職ヴィドリンが工期の遅れを取り戻すために重要な安全確認テストを省略し、強制稼働を指示した。だが堀削作業の最終段階を迎えたその夜、大量の原油が逆流し漏れ出す緊急事態が発生。ついには施設全体に噴出したガスや油がエンジン室に引火し、大爆発を引き起こしてしまう・・・。
メキシコ湾沖の石油掘削施設で発生したという大規模な原油流出事故を描いた本作は今から七年くらい前の事故で、おそらく当時はテレビなどでも大々的に報じられていたのではないかと思うんですが、それでも遠い地での出来事だったせいか正直言うと自分はこの事故の記憶が全然無かったりします・・(汗)。なので無知ゆえにこの事故の当時の状況を深く知ってみたいとも考えて鑑賞に踏み切ったわけなのですが・・・なるほど、世界最大級の人災とも言われるその惨状は戦慄を覚えました。
安全作業や整備・点検の怠り・・そういったヒューマンエラーが積み重なっていき、取り返しのつかない結果を招く・・・といった事件・事故はなんかほぼ毎年のようにテレビで取り上げられているような気もしますし、そしてそうしたものを見る度に自分もどこか呆れに近い感情が出て来る時がありますけど、本作の事故の舞台となるディープウォーター・ホライゾンでの出来事も正にその呆れた判断と強硬策が招いた悲劇そのものでしたね。工期の遅れを取り戻そうと安全テストをそっちのけにし是が非でも稼働させようとする管理職員の身勝手な振る舞いとその理屈。更には納得のいかない事でもそれらしい専門用語を交えてもっともらしく力説されてしまうと、人は何故ああも言いくるめられるようになってしまうのやら?第三者視点としてはちょっとおかしいだろとも思っちゃいますが、やっぱりああいうのって権限と発言力の高い人がどうしても優位な立場になっちゃうのが自然なんでしょうかねぇ?カート・ラッセルが演じてた人望と責任力のあるジミーも雇われの立場のようでしたから、もし彼がもうちょっと地位的に優位な立場であったならば果たしてどういう結果になっていただろうか?という想像もしてしまいます--;
そんな対立諸々が結構長々と続いていき、二時間の尺の中で多分小一時間ほど使ってたんじゃないかなぁ?と映画的には少々心配する展開もありはしましたが、原油が逆流する危機が迫ってきてからはもう畳み掛けるような衝撃映像の連続ともなり、自然と目を離せなくなりますね。・・・と言うかあれはもう恐怖そのものだった。
こういったパニック系の作品である以上、やはりスペクタクルに見せるべく過剰な部分も含まれているとは思いますけど、それでも事実の出来事である以上その再現度も高いはずですから、そう考えるとあの施設の頂上まで噴出する原油や大爆発のシーンは体がビクッと震えるほどの恐ろしさも感じましたね。ここら辺はさすが視覚効果や音響部門でノミネートになっただけはある迫力といった所でしょうか。それと心なしかカメラワークも凄いブレブレなようにも見えたので、観てる方もあのパニックの只中に放り込まれたような臨場感を味わえたような気がします。・・・そこにあんまりワクワクしちゃいけないと思いつつもね(汗
しかしまあ本作は実録でもある以上過剰なドラマチックさも然程無く、本当にあの日の出来事を映像として落とし込んだのような内容ではあったんですが、個人的にはその忠実さのようなものが返って良かったかなとも思う。事件や事故はテレビで報じられない真実もあるでしょうし、当時の現状なども当事者にしか分からない事も多いでしょうから、本作を鑑賞してその一端でも知る事が出来たという意味では、やはり自分は観る価値があった作品だとも思いました。
あとキャスティング面でも主演のマーク・ウォールバーグはとても良かったですね。地獄と化した場所でも仲間を見捨てず果敢に救出に向かったり精一杯鼓舞をして勇気づける男・マイクを大好演で、本作のウォールバーグは個人的にとてもサマになっていた気がする。・・その逆に管理職員のヴィドリンを演じていたジョン・マルコヴィッチもまあ良い意味で嫌われ役の方を好演してましたねぇ。久しぶりにムカッ腹の立つマルコヴィッチを観れてそれもなんか嬉しかったよーな・・^^;