バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)

【監督】アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
【出演】マイケル・キートン/ザック・ガリフィアナキス/エドワード・ノートン/アンドレア・ライズボロー/エイミー・ライアン/エマ・ストーン/ナオミ・ワッツ
【公開日】2015年4月10日
【製作】アメリカ
【ストーリー】
シリーズ終了から20年。今も世界中で大人気のスーパーヒーロー“バードマン”。だがその役でスターになったリーガンは今失意のどん底にいる。再起のかけたレイモンド・カーヴァーの『愛について語るときに我々の語ること』の脚色・演出・主演でブロードウェイの舞台に立とうとするが、実力派俳優に脅かされ、娘との溝も深まるばかり。果たして彼は再び成功を手にし、家族の愛と絆を取り戻す事が出来るのか・・・。
第87回アカデミー賞作品賞及び監督賞、脚本賞、撮影賞の4部門を受賞した本作は、かつてヒーロー役で人気を博した落ち目のハリウッド俳優が自ら演出する舞台で数々のトラブルに遭いながら再起を掛けると言った内容。・・ここ4~5年の作品賞は少し肌に合わないのが多く、良いと思ったのも一昨年の『アルゴ』くらいでしたから本作も正直な所興味を持ったのはマイケル・キートンの久々の主演作だからという単純な理由だったりします^^;
でも本作は結構面白く観れたかな。映像も変わった演出が見受けられて、不思議な世界観を体験できた気もしますね。
監督のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥの作品は『21グラム』と『バベル』の2作品のみしか鑑賞していませんが、どちらもシリアスなドラマと複雑な人間模様を盛り込んだ作品だったというのを記憶しています。・・なもんですからその2作品はちょっと重い作品にも感じてしまい自分にはどこか苦手な監督さんでもあったんですけど、本作に関しては作風を変えたというだけあって、マイケル・キートン演じる主人公・リーガンのネバーギブアップな物語をブラックユーモアたっぷりに描いててなんとも可笑しく、それでいて彼が度々トラブルに巻き込まれて精神的に追い詰められていく様も悲哀に満ちてたりと、自分が思ってたアレハンドロ監督の作風のイメージが少し砕けた気がしますね。重厚なものだけじゃなくこういったコメディみたいなものも作れるのかぁ~って感じで。主要人物も5~6人くらいで、場所も殆ど劇場の舞台裏の往来ばかりだから上記の苦手要素も然程鼻につかなかったかもしれませんね。
また本作にはかなり独特な映像&音の表現も盛り込まれていましたが、その一つがやはり1カットかと錯覚させられるような長回しの撮影が挙げられますね。実際はそうじゃないんでしょうけど、それでも人や場所がコロコロ変わっても切れ目を感じさせない映像の繋ぎ方は本当に秀逸で驚いたし、観終わってから色々調べて知りましたがあの『ゼロ・グラビティ』に関わっていた人が撮影監督だったそうだからどこか納得w
あと本作で個人的に気に入ったのは『音』の活用ですね。全編で流れているのはほぼドラムミュージックで、ダダンダンダンッシャンシャーン♪といった単純なリズムだけなんですが、これがまた凄く合っている。リーガンの情緒不安定な心情と重ねた使い方もすれば、オープニングとエンディングのスタッフロールなんかでも効果的に使われており、特に後者はドラムのリズムに合わせて文字がリズミカルに表示されていく演出が観てて非常に楽しかった♪ドラムの演奏者も本編にさりげなくカメオしてる辺りも面白くて、何かと印象に残るサウンドだったかと思います。
今回のアレハンドロ監督の新境地のような作品は1カット(みたいな)撮影、現実と虚構が混在してる風景、そして自分も気に入ったドラムサウンドといった斬新な映像表現、それとストーリーも分かり易く小難しさも無かったなども含めれば結構見応えのあったアカデミー作品賞になりましたね♪・・とは言ってもその『気に入った』という部分はあくまで上記の映像表現あってのことだろうし、穿った見方をすればやっぱり映像だけに見入られた作品なのかもと思ってしまったりで・・--;
本編のブラックユーモアも笑えたりする部分は確かにあったんですがそれを理解して笑ってたかと言うとほとほと疑問で、演劇と映画の舞台裏の事や登場人物が皮肉った物言いしてるシーンも正直『ああ、多分そんな感じなのね・・』って風にしか理解してなかったので、自分の映画好きレベルではちょっと追い付けないネタばかりのようにも見えました。