ゼロ・グラビティ

【監督】アルフォンソ・キュアロン
【出演】サンドラ・ブロック/ジョージ・クルーニー
【公開日】2013年 12月13日
【製作】アメリカ
【ストーリー】
地表から60万メートル上空のすべてが完璧な世界。そこで誰もが予測しなかった突発事故が発生。スペースシャトルは大破し、船外でミッション遂行中のメディカル・エンジニアのストーン博士と、ベテラン宇宙飛行士マットの二人は無重力空間<ゼロ・グラビティ>に放り出されてしまう。残った酸素はあとわずか。地球との更新手段も断たれた絶望的状況下で、二人は果たして無事生還することが出来るのか・・・。
宇宙でトラブる作品といえば自分は真っ先に『アポロ13』辺りを思い浮かべちゃったりもするんですが、今度からはこの作品を一緒に挙げても良さそうな気がしますねぇ。突然のアクシデントにより宇宙に放り出されてしまった2人の宇宙飛行士の90分弱の物語は、終始緊迫感に満ちていてかなり見応えがあったと思う。
個人的にも12月の年末作品の中では特に楽しみにしていたもので、予告編でも垣間見えた宇宙空間での絶望感とか映像美とかもそうですが、中でも気にしていたのはやっぱり監督がアルフォンソ・キュアロンだという部分かもですね。この監督さんの作品は『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』と『トゥモロー・ワールド』以外は鑑賞していないけど、そのトゥモロー・ワールドにおいては独特の世界観や長回しの多用が凄い面白かったのが今でも印象に残ってるんですよねぇ。そしてその期待も本作を鑑賞した限りでは充分に応えてくれていたとものだと思う。
まあ本作はいきなり宇宙空間から始まり、それこそ自分は何のために2人の宇宙飛行士は宇宙に行きそしてトラブルに合うのかという『段取り』みたいなものがちゃんと描かれてるとも思ってたので、それらの過程をすっ飛ばしてるような冒頭は『ん?(・_・?)』と、少々の違和感を持ってしまった。けどこの冒頭から既に監督お得意(なのかは分かりませんが?)の長回しが炸裂していて、長い静寂の後にマットが遠くから登場、そこからシャトルとハッブルが連結してる全体像も徐々に見え、他愛ないアメリカントークなどを交わしながらライアンとマットが対面越しで船外作業してる中、はるか遠方から猛スピードで大量のデブリが2人のいる場所に飛来直撃し、哀れ2人は宇宙へと放り出されてしまう・・・・というこの一連の流れが途切れる事無く持続していたので、もう最初から凄い演出で観客を引き込ませてるな~と感じちゃいますね。
また2人が宇宙に投げ出された後の展開もハッブルからISS(国際宇宙ステーション)、そして中国の天宮と、地球に自力で帰るために帰還用シャトルを探して何度も宇宙遊泳を繰り返す過酷さも相当なものっ。当然主人公のライアンもこの状況に何度も心が折れかけますが、その度に彼女を勇気付けてくれるのがジョージ・クルーニー扮するベテラン宇宙飛行士のマットであって、いやはやこの人は本当に素晴らしいっ。自分が絶望的な人になっても無線などで可能な限りライアンをサポートし、生きる希望を見出してくれるその心強さと存在感の何と大きなことか。正直本作ってこのマットとライアンの2人だけしか出てこない為映像特化の作品かなとも思っていたのですが、こういうグッとくる2人のやり取りも多いおかげか、なかなかどうしてヒューマンドラマもしっかりしたものになってる。ライアンの地球での悲しい過去もちらりと汲み取れるから彼女のメンタルの不安定さやすぐ絶望に屈してしまう所もなんか理解できてしまうし、それでも諦めるなと諭すマットの言葉もベテランならでは重みと言うか力を持ってるから結構感動もしてしまう。本作はオスカー候補も視野に入ってると聞いてますが、それもなんだか頷けるとこがありますね♪
・・ちなみにこのレビューを書いている時点で今年も残す所10日を切っているため、実質このゼロ・グラビティが自分の2013年最後の映画鑑賞となってしまったものの、それでも本作はその締めを飾る作品としては非常に満足のいく内容だったかなと思ってます。息苦しさような圧迫感だけじゃなく、無音の表現のこだわりようや、所々でカメラが宇宙服の内部から映し込むシーンに切り替わったりと、まるで自分達も宇宙にいるかのような体験ををさせてくれるリアリティさもあれば、逆にどこまでも果てなく広がっている宇宙空間の暗黒さに改めて恐怖を感じたりもしてしまったほど。ライアンとマットのスペースサバイバルに到っても、絶望や不安を吹き飛ばすくらい『生』への執着がひしひしと伝わって来るので、個人的には映像・物語共に秀逸なキュアロン監督の新しい代表作の1つとなった気がします。