かぐや姫の物語

【監督】高畑勲
【出演】朝倉あき/高良健吾/地井武男/宮本信子
【公開日】2013年 11月23日
【製作】日本
【ストーリー】
この地で、ひとりの女性が生きた。笑い、泣き、喜び、怒り、その短い生の一瞬一瞬にいのちの輝きを求めて。数ある星の中から彼女は何故地球を選んだのか。この地で何を思い、何故月へ去らねばならなかったのか。姫が犯した罪とは、その罰とはいったい何だったのか・・・。
7月に公開された『風立ちぬ』に続くスタジオジブリ作品第2弾にして、宮崎駿監督と並ぶジブリのもう一人の巨匠・高畑勲監督の約14年ぶりの最新作でもある本作。・・いやはや、とても面白くて感動も出来ましたね♪個人的に最初期の予告編とかで拝見するジブリ最新作とかって喜ぶよりもどこかいぶかしげに見ちゃう傾向があり、本作の場合も映像がかなり独特なとこがありましたから尚更といった感じでもあったんですが、やっぱし食わず嫌いみたいなのは良くないですね。これがまたなんともドラマチックな『竹取物語』となっていて、自分もかぐや姫の容姿を含め、作品内の色々な部分に惹かれてしまってた次第です。
そいえば『竹取物語』と言うと日本の有名な古典文学の1つですが、自分の場合だと絵本とか児童文学その他諸々で見掛ける固いイメージ(?)みたいなのをなるべく取っ払った『かぐや姫』としての方が印象はあったり・・^^;(笑)まあそう言ってもその内容すらもはやうろ覚えになりつつあるんですが、それでも『竹から生まれた』『絶世の美女』『月の住人で最後は月に帰ってしまう』というキーワード的なものは把握していて、鑑賞の際もその程度の知識で十分だったかもしれないw本作はそういった誰もが知ってるあろう部分を踏まえつつ何故かぐや姫は月へ帰らなければならなかったのか?という謎や、オリジナルとしてはかぐや姫個人の心情を丁寧に描いてる部分なども盛り込まれていて、彼女の置かれていた状況や喜怒哀楽の表現などがきっちりと汲み取れるものにもなってるんですよねぇ。
登場人物の方も若干増えてるらしく、そのおかげか人間関係もはっきりしてドラマに深みが生まれてた気もしますし、翁や媼の他にも兄貴分の捨丸や他の子供達と心を通わせる普通の女の子らしい幼少期なんかもあれば、親の要望に応えるべく英才教育を受けるも本心はとても窮屈で都での生活にもあまり馴染めず苦悩するといった繊細な気持ちの描写にも結構グッときてしまう。女性らしい一面として求婚とは別に恋愛に近いような感情を捨丸にも抱いたりと、なんか再構築もここまでやっちゃうと別物に見えかねないですねw実際山暮らしに戻りたいとか言う辺りはハイジっぽくも見えちゃったのですが、高畑監督だからあーなるほどな~なんて妙に納得できちゃうその設定w原作に忠実な一方で高畑監督の手掛けた過去作品の色合いが何処とな~く出ている感じがするのも面白いと思えました。
あと個人的に驚いた要素としてはやはりその映像表現。予告編ではまだ未完成の段階なのかな?と当初思っていたあの映像はその実未完成でもなんでもなかったわけで(笑)、筆というか水彩画で描かれたアニメーションは明らかに今までのジブリ作品には無い手法でとても異彩を放っています。・・まあ粗くてどこか古めかしいというのが予告編で観た際の率直な意見だったというのも正直なトコなんですけど、本作の雰囲気にとても合ってるタッチなのもこれまた確かで、思ってた以上に滑らかなシーンも多いですからシーンによってはやはり『美しい』と思わせてもくれる。桜の舞う表現とかも想像以上に綺麗だったし、着物を羽織って琴を弾いているかぐや姫の横顔とか髪をかき上げる細かい仕草とか自分には何とも魅力的だった♪
またそれでいてとてもスピードとパワーを感じたタッチでもあり、予告編でもさんざん観たかぐや姫の疾走するシーンは本編でも凄かった。その場面に到る経緯を知り、効果音や見合う音楽が加味すると見慣れたシーンが改めて新鮮に感じ取れ、バンバンバーンと扉をぶち破ってバラバラバラーと服を脱ぎ捨てザザザーと駆けるかぐや姫のその一連の行動にゾゾッと鳥肌が立ってしまったのです・・。自分はある意味このシーンだけでも本作を観た価値あったかなぁと思っちゃいました。
しかし大昔の作品は現代とは全然意味合いの違うもので作られたものも多いでしょうし、竹取物語に関しても掘り下げる事によって解釈や想像の仕方は様々になるとは思いますが、今回高畑監督が手掛けたかぐや姫の成長物語はこれが定説になってもいいのでは?(笑)と思わせるほど筋が良く通っていたと感じてしまい、結果非常に見応えのあった作品だったと思いますね♪声優さんにも難が見受けられなかった分、個人的には『風立ちぬ』よりも良かったかも?^^;
それにジブリ作品で涙腺が緩むというのもかなり久々な気がしますし、特にラストは相当やばかったぁ~。『ワンダと巨像』じゃないですけど、最後の一羽織りは・・・切ないっ!( TДT)(ブワッ