風立ちぬ

【監督】宮崎駿
【声の出演】庵野秀明/瀧本美織/西島秀俊/西村雅彦/スティーブン・アルバート/風間杜夫/竹下景子/志田未来/國村隼/大竹しのぶ/野村萬斎
【公開日】2013年 7月20日
【製作】日本
【ストーリー】
1930年代、空に憧れ飛行機の設計技師になった少年・堀越次郎。しかし戦争の波に飲み込まれ、次郎は零戦を設計することになる。そんな中、とある少女・菜穂子に出会い恋をするが、彼女は重い病を患っていた・・・
崖の上のポニョ以来ともなる宮崎監督の最新作はなんだか随分と落ち着いた作品になったもんですねぇ。一応実話系などは好物のジャンルなので、戦時中の同時代を生きた2人の実在人物の半生と悲恋を題材にした本内容からは、当時の若者の生き方みたいなものを少し垣間見ることが出来ましたし、中身もまた結構ドラマチックに仕上がっていたのですが、楽しめたかと言えばちょっと違うかな?というのも正直なとこ。悲喜交々さをじんわりと味わわされたような感じにも見えちゃったので・・^^;
しかし『火垂の墓』と時代が近く、また零戦設計技師の物語ともあったため、予告編なども最初観た時はそれこそ自分の苦手な戦争の背景が強い内容なのかなという懸念もありましたが、実際はそれほど濃くなかったしやたら重くも無かったのは救いでもあった。むしろ『そういった部分』は劇中だとアニメならではの過剰な演出みたいなのを利用して敢えてリアリティを崩していたようにも見えましたし、戦争描写も妙に断片的だからキモはやはりそこじゃないんだなとも思えてしまう。
戦争・震災・不景気などが起こっていた非常に厳しい時代の只中で1人の青年が夢に向かって突き進みながらも懸命に生きていた姿は、先行きの不安や絶望といった暗黒めいた所は然程感じさせず、戦闘機の試験飛行や様々な飛行機が大空を飛び交うシーンなども多く見受けられた分、逆に清々しいというか妙に爽やか~な雰囲気で満たしてもくれてた気もするんですよねぇ。震災での出会いを経て数年越しに再会を果たすドラマチックさも加味して二郎と菜穂子の青春模様も後半に行くほど見応えが増して行きますし、遠くない内に別れの時がやってくると言う結末も鑑賞前に理解していたものの、その最後の時まで諦めまいとする菜穂子の生きる姿勢などにも胸打たれてしまうわけでして・・。まあ『死中に活を見出す』ってわけではないですが、やはり今と違って日本にも戦争と言うものがあった分『死』というものが誰の身にも降りかかっていた時代でしょうから、菜穂子のように一瞬一瞬を必死に生きようとする『覚悟』みたいなものが現代とは明らかに異なっていたのでしょうかねぇ?自分が二郎と菜穂子の2人に『暗さ』より『明るさ』、『不幸』より『幸福』の方に見えたのは、そう感じたからなのかもしれません。
実在のモデルを題材にしてるのもそうですけど、雰囲気の良いキスシーンもあれば劇中の効果音なんかも人の声で収録してると言うのをテレビでも知り得ていたので、総じると『風立ちぬ』はジブリ作品の中でも結構挑戦意欲を伺わせる作品のようにも見えちゃいましたねぇ。・・ただ良い作品であることは認めるんですけども、不満が1つあるとすれば今回はやっぱし庵野さんだったかな~・・と(汗
感情があんまり込もっていない淡々としたセリフの数々は二郎を演じ切る上でのものなのか、はたまたただ単に下手くそなだけなのか定かではありませんが、自分にはどーも庵野さんの声は肌に合わなかった。う~ん、ロードショーで放映される度に聞き続けて徐々に慣らしていく他は無いかな?( ̄-  ̄;)